封印作品 (公開中止)で振り返る「平成」の時代【漫画・アニメ】

封印作品 を紹介しながら平成を振り返ります!

苦情・権利・自主規制……平成ならではの「 封印作品 」まとめ

「平成を振り返る」記事系は世の中にたくさんあふれていると思いますが、中でも今回は、表現上の制約やSNSを端とする騒動を受けて見ることができなくなってしまった「 封印作品 」について書きたいと思います。

2019年4月をもって、「平成」という時代が終わります。次の元号は「令和」に決まりましたね。

漢字のチョイスについては賛否両論ありますが、いずれにしても2019年5月からは「令和」になることが確定したわけです。

さて、平成の時代を総括するニュースは様々あれど、すべてに共通しているテーマとして「情報社会化」を挙げることが出来ます。

SNSの普及によって”つながり”が容易になったこと、誰にでも情報発信が可能になったこと、これらを軸として様々なムーブメントが起こるとともに私達の暮らしは便利になりました。

ただしそれと同時に、これまでになかった新たな問題が生じて「不便」になった面があることも見過ごすことは出来ません。

たとえばその具体例は、映像・書籍などコンテンツ作品の中に存在しています。

今回は、漫画やアニメといった日本が誇るサブカルコンテンツの中で、平成の時代に放送や出版にいたったにもかかわらずやむを得ない事情から世間への流通が取り消しとなった

封印作品

について考察していきたいと思います。

 

 

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封印作品 とは? 有名な一例

封印作品とは、何らかの事情により公開が差し止められた作品のこと全般を指す言葉です。

正式な名称というよりはスラングに近いものですが、一般的には、

・内容が差別的であると問題視された
・内容に関する他社との権利問題により出せなくなった
・法律や条例によって規制が加わった
・大災害等が起き、その被害者の心情に配慮した

これらの結果、文字通り世間から「封印」されてしまったコンテンツのことです。

「お蔵入り」とも言いますね。

出版物や映像作品については「売れなかった」「内容が古い」など、公開されなくなる理由は多々あるのですが、これらを理由とするものは封印作品には含まれません。

コンテンツそのものとしての要因というよりも、内容に関するトラブルが起こった結果であると考えたほうが良さそうです。

 

たとえば封印作品として最も有名なものとして、

ウルトラセブン 12話「遊星より愛をこめて」(円谷プロダクション)

を挙げることが出来ます。

いわゆる特撮として人気の「ウルトラシリーズ」のひとつで、ウルトラセブンの存在は非常に有名なことでしょう。

こちらが世に知れ渡った時期は1970年(昭和の話ですが、あくまで一例としてご承知おきを)。

作中の怪獣の設定に関して原爆被爆者団体から抗議を受けたことで永久欠番となった経緯があります。

封印作品の代名詞として、今なお考察がなされたり語り継がれたりしながら現在に至ります。

 

平成で有名な封印作品は、

ポケットモンスター(無印)38話「でんのうせんしポリゴン」

でしょう。

いわゆるポケモンショックとして知られている事件で、このブログをお読みくださっている方の中にはリアルタイムで見ていた方も多いかもしれません。

私も当時、見ていました。

こちらは1997年12月に放送された作品なのですが、作中で「パカパカ」と呼ばれる赤と青の点滅の演出が多用されたことにより一部の視聴者が光過敏性発作を起こしたというものでした。

負傷者は750人にものぼると言われており、入院者も多数いらっしゃいました。

北米では「最も多くの視聴者に発作を起こさせたテレビ番組」として、不名誉なギネス世界記録にも認定されています。(私は幸い、体調に異変をきたすことはありませんでした……)

この事件がキッカケで、アニメ「ポケットモンスター」の放送はおよそ4ヵ月休止したとともに、再開後も修正は不可能と判断されたことで「封印作品」となったのです。

 

当時マスコミ各社は大きくこの事故を取り上げ、その後の平成アニメ業界にも大きな影響を与えています。

アニメの演出では点滅が抑えられ、子供向け番組では最初に「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てる」よう注意を促すテロップを表示するようになったのもこの頃からです。

この影響はたとえばニュース番組にも及んでおり、記者会見の映像でカメラのフラッシュが激しい場合には「フラッシュにご注意ください」など呼びかけるテロップが表示されるようになっています。

 

このように、平成の「封印作品」が密接する理由として、まず挙げられるのはなにかしらの事件・事故と関わりを持ってしまったという場合です。

以下で具体例を見てみましょう。

 

平成の事件・事故と関わった封印作品

○瑪羅門の家族 (週刊少年ジャンプ)1992年25号〜1993年12号

平成で最も凶悪な事件とも言われる「神戸連続児童殺傷事件」(酒鬼薔薇聖斗事件)に関係した結果、封印されることとなった作品です。

事件は連載終了後(1997年)であったものの、作品中に出てきたタイトル「積年の大怨に灼熱の裁きを!」を真似た言葉「積年の大怨に流血の裁きを」を犯行声明に使用したとA少年が発言していることから、実質上の封印状態とされています。

単行本は全4巻まで出ていますが、現在は復刊を見送られています。

そのため出回っているのは中古が中心です。

 

○ラジヲマン(グリフォン)1992年11月号〜1994年5月号

小説雑誌「グリフォン」が休刊したため未完のまま連載終了となった作品です。

このこと自体では封印作品とは言えないのですが作中に原子力エネルギー関連のブラックユーモアが多く、単行本発売予定だった2011年3月の直前に東日本大震災が起こり福島第一原子力発電所事故が発生したことを受け、発売の無期延期が発表されました。

タイトルの「ラジヲ」とは、「放射能(=Radioactive)」からとっているものと推測されます。

Amazonにも直接の取扱いはありませんでした。

 

○MMR マガジンミステリー調査班(週刊少年マガジン) 1995年3・4合併号〜5号「甦るノストラダムス 暗黒大予言」

当時の地元警察とマスメディアが第一通報者の会社員を容疑者扱いし、未解決でいた「松本サリン事件」をもとにした話となっており、「世界を裏から支配する『300人委員会』によるサリンを使ったテロが起きる」という予言が出てくるシーンが作中あります。

するとその掲載2ヶ月後、に「地下鉄サリン事件」と言う形で本当に松本事件の犯人たちによる化学テロが発生してしまったためお蔵入りとなり、現在でも単行本には収録されていない封印作品となっています。

もちろんフィクションとして描かれていたのでしょうが、その後の展開を的確に言い当ててしまう形となってしまいました。

上記以外の部分については現在でも読むことが可能です。

 

○心理捜査官 草薙葵(週刊少年ジャンプ) 1996年46・47・48・53号「Profile3(全4話)」

一家惨殺事件を描いた内容であり、唯一生き残った息子の10歳の少年が犯人として疑われ、彼自身も犯行を認めるという展開でした。

ですが先にも書いた「神戸連続児童殺傷事件」が起こったことで自粛され、この事件のみが単行本未収録の封印作品とされています。

 

○ポケットモンスター(アドバンスジェネレーション)101話「ドジョッチVSナマズン! ゆれる島の戦い!」

2004年11月4日に放送予定だったものの、放送直前に新潟県中越地震が発生したため話そのものが放送されずに封印されました。

サブタイトルを見ても分かる通り、地震を連想させる回となっているため自主規制に入ったと考えるのが妥当かと思われます。

この時期を境に、アニメのポケットモンスターでは作品内で「じしん」や「マグニチュード」といった関連の技が使用されることはなくなりました。

 

○ポケットモンスター(ベストウイッシュ シーズン1)23話「ロケット団VSプラズマ団!(前編)」/24話「ロケット団VSプラズマ団(後編)」

2011年3月17・24日に前後編で放送予定だったものの、放送直前に起こった東日本大震災の影響で放送休止、封印作品となりました。

上記とは異なり、地震そのものではなくむしろ、余波で起こった福島第一原子力発電所事故が原因だと言われています。

当初は改めて放送される予定であると公式サイトにて発表もありましたが、結局放送されないまま現在に至ります。


 

以上のように、平成に実際に起こった事件に関連する作品が封印されるのは、偶発的なものとしていたしかたない面もありますが、封印作品はこれだけではありません。

出版社やアニメ制作が一度内容的に問題がないと判断を出したにもかかわらず、特定の団体や集団からのクレームにより判定が覆ったという例も存在します。

平成に入り「表現上の規制が厳しくなった」という声をしばしば耳にするように、かつてはOKだったのかもしれませんが現在では許されないといった封印作品も存在します。

 

 

内容に規制が入った封印作品

○燃える!お兄さん(週刊少年ジャンプ)1990年45号  「サイボーグ用務員さんの巻」

発行部数500万部、いわゆる「ジャンプ黄金時代」とも言われる頃の週刊少年ジャンプに連載されていた作品の1話です。

登場キャラクターがあいつぐ失態により教職をクビになり、用務員として再び学校で働くことになったところでそのキャラに対して主人公が暴言を吐くという場面が問題となりました。

用務員という職業への蔑視であることは明白であり、発行元の集英社は回収した上お詫びをするという運びになりました。

そのため現在では封印作品として扱われています。

1990年といえばまだ平成になって1・2年ほど。

現在ほど規制が厳しくなかった頃かもしれませんが、それでも職業差別は(ジョークとはいえ)好ましいものではありません。

この騒動は「平成ならでは」というよりも、むしろ一般的な配慮不足として対応も妥当だったと言えるかもしれません。

 

○奥サマは小学生(チャンピオンRED いちご)2006年Vol.1〜2008年Vol.9

作者曰く成年漫画のパロディとして描いたギャグ漫画だったとのことですが、青年漫画に見受けられる特有の過激な表現に対する規制派から、タイトルを名指しで批判されたことから自主的に絶版を申し出て、封印作品となった経緯があります。

「このようなジョークの通じない時代になった」と述べられていることからかつては許されていたものと思われますが、それでも昨今のコンビニから成人向け雑誌が廃止されると決まったことなどから考えると、依然として規制は今後も厳しさを増す一方であると予想されます。

もっとも、過激な表現自体はこの作品に限った話ではないため、ある種の見せしめ的にやり玉に挙がったのかもしれませんが……。

書籍自体は絶版となりましたが、現在はマンガ図書館Zで読む事が可能であるほか、購入することも一応は可能となっています。

 

○やりすぎ!イタズラくん(コロコロコミック)2018年3月号

みなさんの記憶にも新しい騒動かもしれません。

チンギス・ハーンの肖像画に男性性器の落書きをしたシーンが問題となり、モンゴル人団体が猛抗議を起こした末、回収騒ぎとなりました。

回収されなかった分が「メルカリ」をはじめとするオークションサイトを通して高値で出回ったこともあわせて話題となったあたりが、昨今のSNSと不可分の現代社会を如実に表す良い例とも言えます。

メルカリにまつわる騒動に関しては、まとめた関連記事もぜひお読みください。


 

このように、昨今の封印作品を語る上で欠かせないのがSNSの存在です。

誰でも簡単に情報を発信し、ふとした話題が大反響を生む(バズる)現代は、ビジネスチャンスの門戸を広く開いたという良い面ももちろんあります。

ただ一方で、本来自己を律するべき存在(作者・出版社の公式アカウント)がふさわしくない言動をとり炎上してしまうなどの案件が急激に増えたことは見過ごせるものではありません。

次は、作品内容ではなく作者そのものの不祥事によって封印作品扱いとなった事例をご紹介します。

 

作者が原因の封印作品

○本日わたしは炎上しました(まんがタイムきららMAX)2018年4〜8号

作者である「どげざ」氏が過去にヘイト発言を行っていたことが発覚したため、皮肉にも作品よりも作者が「炎上(悪い意味で)」する騒ぎとなった結果、打ち切りとなりました。

詳細がハフポストにまとめられているため、あわせてご参照ください。

作者そのものの人格と作品内容はあくまで別物ではあるため、作者の過去の発言や行動を原因として作品が封印されることは必ずしも正しいこととは言えません。

とはいえ、SNSを介して作者とファンが交流を持つことも用意となった昨今では、作者イメージが作品イメージに直結する以上、自身の素行も決して無視できるものではなくなってきているでしょう。

アルバイトがツイッターに投稿した不適切動画が社会問題になっているのと同様、誰しもが自らの意見を発信できるようになった以上は、誰であれ将来に向けてモラルも保っていなければなりません。

平成が終わり、令和になってからも私達ひとりひとりが向かい合わねばならない課題とも言えるでしょう。

 

○二度目の人生を異世界で(小説家になろう)

作者の「まいん」氏がもともと、文字投稿サイト「小説家になろう」で発表していた作品です。

ライトノベル化され商業展開を見せていたものの、上記と同じく作者のヘイト発言から騒動が巻き起こり、書籍版は出荷停止、漫画版は打ち切り、アニメ版の制作および放送は中止が発表されました。

全ての商業展開が打ち切られたという意味ではこちらの方が損失は大きかったかもしれません。

元になった掲載ページは残っているものの未完のままですので、名実ともに封印作品となってしまった惜しまれる例です。


 

ここまでいくつか例を挙げてきましたが、封印作品となる原因として忘れてはならないのが「著作権」の存在です。

「このくらいは大丈夫だろう」という甘い認識がのちに大きな騒動になりうる可能性を秘めている著作権問題。

平成の封印作品にも、著作権にまつわるものがいくつもありました。

 

著作権侵害による封印作品

○さよなら絶望先生(週刊少年マガジン)2011年34号掲載「ペイの拡充」

後半の展開が「ドラえもん」の単行本13巻に収録されている「お金のいらない世界」(単行本13巻収録)と完全一致してしまったために封印作品となったものです。

作者とアシスタントは言われるまで誰一人として気付かなかったらしく、版権元に問い合わせたところ「故意でないのは明白」ということで単行本の掲載も問題ないとされたそうですが、作者自身が納得できなかったとのこと。

作者の漫画への意識の高さに感銘を受けるとともに、知らないことが問題になってしまう怖さというのは誰しもが明日は我が身となる危険性をはらんでいます。

 

○瀬戸の花嫁 第拾七話「県警対組織暴力」

2007年に放送されたアニメで、厳密には封印されたわけではありませんが著作権問題の典型事例として挙げました。

この回に登場するキャラクターに、「仮面ライダーストロンガー」に登場する悪の組織「デルザー軍団」を模したものが登場するため著作権侵害の疑いがあるとされ、AT-Xでの放送が出来ずに一時封印作品とされていました。

ただし後に問題点を修正して放送され、発売されているDVDにも修正版が収録されていることを補足させていただきます。

 

○俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長

電撃小説大賞で最終選考に残った末に出版されたライトノベルでした。

ですが、「バカとテストと召喚獣」などをはじめとする複数作品からの盗用が明らかとなった結果、絶版、回収処分となった封印作品です。

著者は後に同レーベルの「正義の味方の味方の味方」で作家として復帰しているため、あくまでこの件に関してのみ問題が起こった著作権問題だったようです。

 


以上からわかりますように、封印作品とは昭和の差別用語などが原因で起こる「過去の遺物」というわけでは決してありません。

平成に入ってからも、問題となりうる作品は世に出続けています。

もちろんコンテンツとしての面白さとモラルは紙一重です。

保守的になりすぎて業界のクオリティが招かれてしまっては元も子もありません。

これを読んでいらっしゃる方の中には、未来のコンテンツ制作者、あるいはそうなることを志している方も多数いらっしゃることでしょう。

「令和」を支えるみなさん、自分が丹精込めて作り上げた作品が「封印」されてしまうことのないよう、最低限の注意やリスクヘッジも念頭に入れつつ、すばらしいコンテンツホルダーへの道を歩んでいっていただければと思います。



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