大坂なおみ / カズオ・イシグロ から考える「 国籍 」問題

大坂なおみ 選手の 国籍 についての争点まとめ

大坂なおみ (テニス)さんの「 国籍 」問題、争点は?

大坂なおみ 選手の「 国籍 」に関してよく話題となる、「二重国籍」についてみなさんはどこまでご存知でしょうか?

大坂なおみ選手がテニス全米オープンで優勝したことで日本中が歓喜の渦に包まれています。日本人選手による初の四大大会優勝となったわけですが、(案の定と言えば案の定なのですが…)これに対してTwitterで、

大坂なおみは日本人なの?
全然日本人に見えない

という意見も飛び交っています。

 

大坂なおみ選手は、ハイチ系アメリカ人の父と日本人の母との間に産まれた方で、現在は日本とアメリカの二重国籍。生まれは日本ではあるものの現在のお住まいや教育を受けた場所、トレーニング場所もアメリカです。

ですがプレイヤーとしての国籍は日本を選んでいらっしゃるため、世界では「日本人」として扱われています。

「日本人」が「日本人」を「日本人」扱いしない

というのはとても悲しいことではあるのですが、そこには理由として、「大坂選手が二重国籍である」ということも挙げられるのではないでしょうか。

 

今回は大坂選手の情報とあわせて、

日本人が二重国籍であると何が問題になるのか

について書きたいと思います。

 

スポンサードサーチ

大坂なおみ選手の基本情報(国籍含む)

二重国籍について触れる前に、まずは大坂選手に関する基本情報をまとめておきます。

名前:大坂なおみ
生年月日: 1997年10月16日
年齢:20歳(※2018年9月現在)
出身:大阪府大阪市
住民票所在地:北海道札幌市
身長:180cm
体重:69kg
国籍:法律上は二重国籍、テニス選手としての国籍は日本

ハイチ系アメリカ人の父親と北海道根室市出身の母親を持ついわゆるハーフで、3歳からテニスをし始めたのだそうです。アメリカに移住したのが2001年、その後アメリカ暮らしを続けているものの、父親が「テニス選手としての国籍」において日本を選択したために、日本代表として闘っているのだそうです。

特に今回の優勝を機に、住民票所在地である北海道札幌市のみなさんは、大坂選手が日本に来ることを待ち望んでいるようです。

ちょうど北海道では地震による被害が大きかったため、このニュースは明るい話題として道民に希望をもたらしたことでしょう。

 

こう見ると、二重国籍とはいえ日本人の多くが大坂選手を日本人として受け入れているように見えますが……。

たとえば、大坂なおみ選手をYahoo!やGoogleなどの検索エンジンで検索すると、関連ワードとして「日本人じゃない」という言葉が出てきます。

これは「サジェストワード」と呼ばれるもので、検索エンジンで検索をしやすくするようにユーザーが最も検索をかけているワードを推奨するサービスです。一緒に検索されることが多い言葉が表示されます。

このことはつまり、

大坂選手を「日本人じゃない」と思っている国民も大勢いる

ということを示しています。

冒頭でも示した通り、大坂選手の優勝を受けて一部の国内ツイッターユーザーからは生い立ちをめぐる差別的な投稿が上がっていることもこの考え方によるものでしょう。

 

確かに大坂選手は、4年間しか日本に住んでいないため育った環境から日本語よりも英語の方が流暢です。優勝が決まったことで民放各局が大坂選手と生中継でインタビューを放送していましたが、そこでもスタジオからの質問は現地通訳により英語に翻訳されて大坂選手に伝えられていましたし、大坂選手のコメントの多くが同時通訳で日本語に翻訳されたうえで私達に伝わってきました。

日本語が上手く話せない場面も多く、また日本に居た経験も少ないということから、「大坂選手は日本人なの?」と疑問を持つ人が多いというのが現状です。

 

二重国籍は原則禁止! だけど抜け道も…

やはり問題となるのは、「結局大坂選手は日本人といえるのか?」ということです。

日本人に見える見えないといった主観的な問題ではなく、法的手続きなどによる客観的目線から大坂選手の扱いとなるのかについて触れていきます。

今回一部の人が争点としているのは、大坂選手が二重国籍であるというところです。

日本では、日本以外の外国にも国籍を置くいわゆる「重国籍(二重国籍)」状態の人については、原則として二重国籍を認めず、どちらの国籍を選択するのか明確にするよう促しています。2017年には蓮舫議員の二重国籍問題が世間をにぎわせましたが、それも今回の問題に通じるところがあります。

国籍選択について法務省によると、

○国籍の選択をすべき期限
20歳に達する以前に重国籍となった場合→22歳に達するまで
※なお,昭和60年1月1日以後に重国籍となった方が上記期限までに国籍の選択をしなかったときには、法務大臣から国籍選択の催告を受け、場合によっては日本の国籍を失うことがあります

とあります。

大坂選手は2018年の誕生日で21歳となるため、来年までにはどちらの国籍を取得するか考えなければいけないことになります。現状を続けているとやがては、場合によっては日本の国籍を失う恐れがあるとも言えるのです。

 

大坂選手が選ぶとすれば「日本国籍」「アメリカ国籍」のいずれかになるのですが、ここで日本とアメリカの法制度の違いによって

アメリカ国籍を選ぶ…日本国籍は消失
日本国籍を選ぶ…アメリカ国籍は消失されない

という結果が待っています。

この差が出る理由も明瞭で、

日本は多重国籍を認めておらず、アメリカでは多重国籍を認めている

ただそれだけの差です。

日本においては国籍法16条によって、二重国籍は以下のように定められています。

日本国籍の選択宣言をすることにより、国籍法第14条第1項の国籍選択義務は履行したことになりますが、この選択宣言により外国の国籍を当然に喪失するかについては、当該外国の制度により異なりますこの選択宣言で国籍を喪失する法制ではない外国の国籍を有する方については、この選択宣言後、当該外国国籍の離脱に努めなければなりません。

つまり、アメリカ国籍を選択すれば日本国籍を失い、日本国籍を選択すれば(理屈の上では)アメリカ国籍も持てる二重国籍で居続けられることになります(アメリカ国籍の消失は、あくまで努力義務)。

 

最後は大坂選手の判断にゆだねられることとなるでしょうが、上記の理由により大坂選手は将来的に「日本国籍」を選ぶことになるのではないでしょうか。そうすれば、法制度上も今の生活に近いままで過ごすことが出来ます。

テニスプレイヤーとしての今後の活躍についても、基本は「その国のパスポートを保持する」という条件を満たしていさえすれば良いためであり、日本とアメリカどちらの国籍を取得しても問題はありません。

個人的には同じ日本人として日本国籍を選んでいただきたいところではありますが…まずはプロスポーツ選手として自分にとって最良のコンディションを目指すことを優先していただきたいものです。

 

大坂なおみ選手の二重国籍って、悪いことなの?

こうして見てみると、大坂選手が二重国籍を改めなければならないような風潮になっているのは「日本の制度で認められていないから」だけが理由であることがわかります。

世界的に見ても移民受け入れが進むヨーロッパをはじめ二重国籍を認めている国はたくさんあり、むしろグローバル化していく国際情勢の中で新たに法律を見直して二重国籍を認めるようにした国もあります。

たとえば先の蓮舫氏の国籍問題のように、政治的な事情が絡むと二重国籍であることがスパイであるかのような誤解を与えかねないという意見はわかります。

外交官等の外務公務員については外国の国籍を有することを欠格事由としており、人事院は人事院規則において、国家公務員の外務省専門職員採用試験の受験資格につき、外国の国籍を有することを欠格事由としています。同様に他省庁のキャリア官僚の場合は多くは外務省における在外公館への出向が想定されていることから、多重国籍者は事実上制限されています。

一方で日本国民が外国の国籍も有する多重国籍であること自体は公職選挙法上の「被選挙権の欠格事由」には該当しません。そのため外国の国籍を有する日本国民が国務大臣や内閣総理大臣になることにも法律上の規制はありません。ですが国会議員から起用されることも想定されている外務公務員に就任することはできず、選挙で当選しても国籍法により日本国籍を失った場合は被選挙権喪失という形で公職を失職となります。

 

ですが「二重国籍であるということ」それだけで問題視する必要があるのでしょうか。

確かに古くは日本は単一民族の島国国家であり、今でも「外国人」に対して違和感を持つ部分は否めません。外国移民を受け入れることについては「日本人の就労機会を失わせる」などの理由から今でも反対意見が根強いのも事実です。

ですが海外においては多くのスポーツ選手も二重国籍が当たり前です。オリンピックなど国別の世界大会でも毎回、二重国籍者がどの国の代表で出場するのかに注目が集まります。

 

二重国籍が問題となるケースは主に、「複数の国籍を持つことによる個々に対する愛国心の衝突」が考えられます。

たとえば極論ですが、「戦争になったとき、どちらの国民として戦うか」ということなどですね。

ですがそれは逆に言うと、「戦争でも起こらない限り二重国籍は問題とならない」ということも意味します。そもそも有事の際に、全員が自分が住んでいる国よりも国籍を優先するを代表して戦うことを選ぶ保証もないわけで。

思うに、日本では国籍と民族が同一であることが当たり前であるため、「二重国籍とならざるを得ない」状況を想定して来なかっただけかもしれません。

世界中で人の移動が盛んになっている昨今、自らの意思で海外に移住したり働いたりする人は増えています。母国での内戦などにより、海外に行かざるを得ない人も多くいます(いわゆる「難民」)。

日本の法制度が二重国籍禁止である以上、それもまたひとつの考え方であるため

一刻も早く法制度を変更すべきだ

などと言うつもりはありませんが、

・海外で活躍する日本人が日本国籍を放棄せずに現地の国籍も取得できるようにすれば、活躍の幅も広がる
・日本を含む多重国籍者が将来外国と日本を行き来して暮らしたり仕事をするようになれば、日本社会にも利益がある

という可能性もまた事実ではないでしょうか。

 

今回の大坂選手とはちょうど逆の存在として、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏が挙げられます。

イシグロ氏は日本人の両親から日本で生まれたものの、国籍選択の際にイギリスを選んだため日本国籍を放棄した存在です。日本人のご両親とは日本語で話しているものの公では日本語を話さないことからも推察するに、何かにつけて「(日本国籍がないのに)日本人である」と扱われることに対して思うところがあるのかもしれません。

大坂選手⇒日本国籍を持っているのに、日本人扱いされない
イシグロ氏⇒日本国籍を持っていないのに、日本人扱いされる

このようなねじれを見ると、本当に「国籍というのはただの一制度に過ぎない」とわかります。

もしも日本が二重国籍を許していたら、きっとイシグロ氏は日本国籍を残していたでしょう。そうすれば、カズオ・イシグロ氏という「日本人」のノーベル賞受賞者が生まれていたのかもしれません。

当時、イギリスで有名なブッカー賞(Booker Prize) を受賞するにはイギリス連邦の国籍が必要でした。イシグロ氏がこれを受賞したのは1989年のことで、その後2013年に「イギリスで出版され英語で書かれた作品」であれば外国人でも受賞できることになったといういきさつがあります。

 


大坂選手の話に戻りますが、テニスの記者会見等では英語で質問された後に、自らの国籍の言語での質問も受けるのが通例とされています。

そのため大坂選手は、アメリカ在住であるものの「日本人の」大坂なおみさんとして、国籍に関わらず日本語の勉強もしているのだそうです。

日本人であることのためにそのような頑張りを見せる大坂選手に対して、

日本人じゃない

なんて切り捨てた考えを持つのは、時代錯誤も甚だしいです。

 

今後日本人が世界に活動の場を広げ、日本以外の様々な場所で功績を残していくうちにこの二重国籍の問題は必ず付きまといます。

賛否両論あるところではあるかと思いますが、少なくとも私達のような個人レベルとしては

制度上日本を選んだ人は「同じ日本人」として差別なく接しよう

という考えであるべきですし、

視野を広げて「同じ地球人」としてすべての人を受け入れる

ことが出来るようになれば結果として「日本」の評価もますます上がっていくのではと思っている次第です。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です