単館作品 「カメラを止めるな!」で得する人損する人

単館作品 から一躍大ヒット作に!

「カメラを止めるな!」という映画がこの夏とても話題になった。監督さんやキャストさんが困惑するほどの大盛況っぷりで、上映2館からはじまったのが、動員は100万人を突破。もはや社会現象までなった。

最近誰に会っても、

『カメラを止めるな!』見た?

と聞かれる。

みんな示し合わせたかのように同じ感想ばかり並べるのはご愛嬌だとして(最初の37分は耐えろ!的な)、中でもあたしが気になるのは、

単館ビジネスが熱い! オレもやってみようかな

という起業意識の高い人。もしくは、

単館上映なら私もオーディション受けてみようかしら

という、あわよくばタレントに…意識の高い人。

それを聞くたびに、あたしは「なんだか地下アイドルビジネスに通ずるものを感じるな…。」って思う。

 

結論から言うと、あたしは

今から単館上映で一発逆転を狙える可能性は、ほぼゼロに等しい

と思う。

今回は映画の出演者と配給会社の話を踏まえつつ、

単館上映ビジネスで、得するのは誰か

という話をしていきたい。

 

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単館作品 、出演者は誰も得しない

一般社団法人日本映画製作者連盟のデータによると、2017年に日本で公開された映画の本数は邦画洋画合わせて1,187本。そのうち興行収入10億円を超えたタイトルは62本。今年の「カメラを止めるな!」についても8月末段階で興行収入が12億円超えだから、このあたりが単館上映のロマンになる。

割合でいうと5%。

ところが実際のところ上記にカウントされていない映画も有象無象あるだろうから(もしここまで話題にならなかったら、「カメラを止めるな!」はカウントされてたのかな…?)、割合はもっと下がると思う。

実質1%は余裕で切るんじゃないかな?

その1%に向けて単館上映ビジネスに飛び込むくらいなら、その予算で株を買った方がはるかに儲かる。300万円あったら、結構な銘柄が買えるんじゃないかしら?

だから純粋なお金儲けで映画をエンタメに進出するのは博打要素が強すぎる。あなたが自分のポケットマネーで300万円を映画製作に回したいと思ってるなら、すぐにやめるべき。

 

とはいえエンタメ業界は、「お金」に限らない「夢」がある。金銭欲求と承認欲求を同時に満たせる可能性を秘めている。そういう意味だと、追求したくなる理由もわかるけどさ…。

少なくともお金儲けだけを目指すのならば、これだけは言える。

「雇われる側」じゃなくて、「雇う側」として映画を作りなさい!

 

まずは「単館上映」をするにあたり、どのようにお金が動くのかを確認する。

一般的なイメージとして、映画を撮影するメンバーは

・監督
・動画編集者
・脚本家
・出演者
・その他雑務

の方々によって成り立っており、もし作品が大ヒットしたらこれらのメンバーで山分け!…となりそうなものだけど、残念ながらそうはならない。

多分「カメラを止めるな!」だって、製作費300万円にも関わらず、仮に数億円の売り上げが出ていたとしても製作スタッフにはほぼお金は入らない

もし入るとしても監督までかな? 少なくとも、出演者にキャッシュバックされることはありえない。

なぜなら彼ら彼女らは、「雇われた側」だから。言うならばサラリーマンと同じ。会社の売り上げがどれだけ上がったところで、ポンと目に見えて給料が上がらないのと同じ。

 

「カメラを止めるな!」は、監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾作品らしい。たいていの「スクール作品」というものは、

大学の卒業制作となんら変わりがない。

おそらくスクールから予算(今回だと300万円)が出て、

この範囲内で作品を作ってもイイよ

と許可をもらって作らせてもらっているのに等しい。

基本的にこの手の作品というものは「商業的に利益を上げる」というものではなく「作ったという事実が大事!」という考え方をされるため、そもそも最初から売れた時のことを考えている人なんていないのだ。せいぜい「宝くじが当たればイイな」くらいのもので、そういう意味だと今回はまさに1等前後賞含めて総取りしたようなもの。いざ宝くじが当たった後のプランを詳細に考えている人なんて、宝くじを買ってる人の中には誰もいないでしょ?

 

出演者はたいてい、オーディションで選ばれた無名の俳優達。「カメラを止めるな!」もまたしかり。たいていが舞台俳優さんやライブシーンで活躍するアイドルさんなんかで構成されている。

そうなると監督、脚本家、出演者さんのモチベーションとしては、

お金とかどうでもイイから、とにかく代表作を持ちたい!

となる。

今後さらにタレント活動を続け、一般知名度を広げていく中で、

以前にこういう作品に出ていました!

という名刺代わりに使うために作品に出演している。さらなる高みの「代表作」となる作品に出演できることを目指して…。

だから多分出演者の大半が、交通費程度の支給で撮影する。そりゃほとんどの映画は赤字になるんだもん、タダでも出たい出演者がいる以上、出演者の給料は上がらない。

今テレビや取材に引っ張りだこの「カメラを止めるな!」キャスト陣も、実際のところまだ全然儲かっていないと思うわ。

宣伝PRのために~…

とか言って、安いギャラで出演しまくっている。そして出演者サイドも、「これで名前が売れるなら!」という希望を胸にそれを了承している。

ギャラ交渉が出来るようになるまで、先はまだ長い。

 

今回は偶然大ヒットした例だけど、大半の映画が世に知られることもなくコンテンツの瓦礫に埋もれていく。「代表作」として使えないケースがほとんど(何もないよりはイイんだろうけどさ)。さらには売れていない作品ほどチケットノルマを課せられたり、むしろお金を払って出演するなんて場合もある。

となると映画出演者はオーディションを勝ち抜いたにもかかわらず、

奇跡の大ヒット:稼働ばかりが増えてギャラは安い
大コケ:話題にもならず出費だけがかさむ

結論:出演者はどうあがいても損する人

となる。あくまで数字の上ではね。

それでも「やりたいこと」なんだとしたらあたしは応援するけど、

最初から出演者が儲かるなんてことはありえない

ってことは覚えておくべきかなって思う。

 

得するのは…結局大きな「法人」

じゃあ今回の「カメラを止めるな!」の売り上げはどこに入るかと言われたら、「製作会社」と「配給会社」となる。

クレジットを見た時に、

【製作】ENBUゼミナール 【配給】アスミック・エース=ENBUゼミナール

となっている2つの会社。

先ほど上記で「監督は儲かる可能性がある」と言ったのは、あくまでこの「製作会社」の一員としてカウントしたから。もちろん出演者は売り上げに一切関係ない。

そして今回の場合、10億円以上の興行収入はアスミックエースという会社のほぼ総取りという形になることが予想される。ENBUゼミナールももちろん儲かるんだけど、たいていこういう場合儲かるのは映画配給会社のみだ。ENBUゼミナールは配給にも関わっているっぽいから、製作よりもむしろ配給で儲かる方が大きい。

この「配給」がどうして儲かるかの話を次はしていく。

カメラを止めるな!は学校製作の映画ということで必ずしも当てはまらないかもしれないが、一般的なお話として書いていく。

 

例えば、ここ「オウンドベース」で自主製作の映画を作ろうという話になったとする。製作予算は300万円。

あたしたちは映画会社じゃないから、製作しても上映する場所がない。映画館を個別に借りられたとしても、宣伝する場所はHPとTwitterだけになるから、人目に全然つかない。

そこで全国上映するためには、大手の映画製作会社に依頼する必要が出てくる。

いわゆる映画会社は、「配給」「興行」を請け負ってくれる。「配給」とは宣伝と映画館のブッキング。「興行」とは映画館で上映することそのものってイメージかな。つまりこの場合の関係性としては、

製作:野菜や果物(=作品)作り
配給:市場への卸
興行:消費者への販売

となる。

で、次に配給会社がすることは、あたしたち「オウンドベース」への宣伝費の請求。始まる前からお金を取る。そして、そのお金を使って宣伝し、自分たちの持つ映画館チェーンで上映することになる。

まだ1秒も上映されていないのに、もう得する人(=配給会社)損する人(=製作陣)の差が出てくる。

たいていはコケてそこでおしまいだけど、そこで奇跡的に1億円の興行収入が出たとする。

そしたらまずは、上映した映画館グループが収入を持っていく。だいたい50%かな? 残りは5,000万円。そこから次は、これまた配給会社が半分くらい持っていく。2,500万円を取られて残りは2,500万円。それが映画製作をした、あたしたち「オウンドベース」の収入となる。

興行収入の75%くらいは、配給会社陣営が持っていくことになる!

これは夢がない…。

しかも映画を作った「オウンドベース」としては、製作費に300万円使ったうえに、宣伝費としても数百万円ほどお金を払っている。興行が増えるにつれ宣伝費もかさむので、合わせて1,000万円の出費だと考えたら、すでに儲けは1,500万円程度になっちゃう。

 

今回は製作予算300万円で想定したけど、あたしたちが思い切って1,000万円の予算で映画を作っていたとしたら、

1億円の興行収入でも、取り分はほぼなし!

という状態になる。

 

結局どんな良い作品を作っても、広く宣伝出来たり上映する場所を持っている「既存の強み」がある企業が勝つようにできているんだね。

さっきの「オウンドベース」の例でいうと、映画会社は支出なく宣伝費をもらい、自分たちの映画館を「使わせてやって」1億円の売り上げをたたき出す。

単館系の上映であれ、

場所を持っている方が圧倒的に得をする

ということがわかってもらえたでしょ?

 

そりゃ盗作されたってごねるよね。そっちの方が得するもん

このように、出演者であれ映画製作スタッフであれ、「映画ビジネス」にはかなりのリスクを背負うことになる。

結局儲かるのは、配給と興行の会社のみ。売り上げから収入を得るわけだし、失敗しても被害は小さい。なんなら、出演者に無理やりチケットノルマを課しさえすればある程度の興行も担保できるわけだし、傷を自分たちの手で調整することだってできる。

だから結局言えることは、

映画製作は損

だってこと。

 

でもあたしたちは、今から配給会社になることはとても難しい…。すでに出来上がっている体系だからね、新規参入するにも限界がある。

だからあたしたちが「金銭的に」得をするにはどうすれば良いか?

映画を作りたい人たちに出資するしかない!

いわゆる投資家に近い動きをするしか、得する方法は無いんじゃないかと思う。要するに「製作費」をこちらで一部負担する代わりに、売り上げの一部をもらうってことね。

取り分は出資額に応じてだから少なくなることもあるけど、一番現実的。

 

初期投資する金額がないうちは、他のビジネスを考えた方がイイ。

ある種、あきらめも大事。働き方は他にいくらでもあるから。

 

だけど、映画製作スタッフにはロマンがある。有名になってもっと大きな予算がもらえたら、自分の撮りたい映画が作れる。出演者にもロマンがある。有名になったらもっと高額のギャラがもらえて、自分にしかできない役を演じることが出来る。

ここに関してはお金じゃ買えない幸せがあるから、損得勘定で計るのは野暮な話よね。それだけの熱意があるなら、製作や出演の世界に飛び込んでみるのもイイと思う。

 

だけど実は「カメラを止めるな!」に関して言うと、そんなこともせずに一番楽に得した人がいることを忘れちゃいけない。

それは、「盗作騒ぎ」を起こした人。

一部でも言われていることだけど、原作を主張している方は完全に後乗っかりで、ある意味一番得をして、あらゆる意味で一番ズルい出方をしている。

私の考えたものを盗作された!

とヒット作品に対して主張すれば、必ず話題になる。とりわけ今回のような無名スタートの単館作品であればなおさらで、法的な部分は曖昧なまま進んでいたことからも、完全に「ゴネ得」状態になっている。

・盗作を主張したら、ゴネた自分の名が世に知れ渡る
・製作会社を相手取って訴訟を起こしたら、示談金をもらえる可能性がある

「しないよりはマシ」くらいの精神で、手軽に主張していろいろ手に入れられる。

ヒット直後の大事な時期なのだから、なるべく波風立てたくないと製作側は考えるはず。となると、まったく落ち度がなかったとしても火消しのためにいくばくかお金を払う可能性はある。

事実、法律家の見解の中でも和解の可能性が示唆されている。

 

今回はもともとの知り合いだったみたいだからまだしも、全然知らない第三者に「ゴネ得」されたらたまったものではない。なにより気分が悪くなるもん。

そういう意味だと、クリエイターに一番向いてるのはあたしみたいになんでも損得で考えない、自分なりの価値尺度を持って何事にも取り組める人なんだろうな…って思う。

一方で、こういう「ゴネ得」を狙う品のない人にはクリエイター性をなにも感じないのはあたしだけ?

先に有名になったもん勝ち
有名になるための運が強いもん勝ち

みたいなところはある程度割り切らなきゃやってられないと思うんだけどな…。じゃないとこの先しんどいって。

 

この先インターネットを介したオンデマンドが今よりずっと主流になって、今回の騒動を機に法律回りにもっと気を遣うようになって、配給会社と権利主張の激しい個人だけが得をしない環境ができたら、映画ビジネスはもっと面白くなると思う。

映画ビジネスに限らずだけど、

リスクをとっても即行動! 先手必勝!

が、なににつけても大事なんじゃないかな。



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